02. 冬になると便利になる

「1000万平方キロ」の奇跡02. 冬になると便利になる

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カナダに住む人々の「移動」に触れるため、僕は2月のイエローナイフにやってきた。

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カナダの極北地帯に位置し、日本の約4倍もの面積を持つノースウエスト準州の州都がここ、イエローナイフだ。

かつてゴールドラッシュで栄えたこの街は、今や世界有数のダイヤモンドの産出地として知られている。また、一般的にはオーロラ鑑賞の拠点というイメージの方が強いかもしれない。

僕がイエローナイフにやって来たのはこれが2回目だ。空港に到着すると、前回同様にホッキョクグマが出迎えてくれたけど、この辺りにホッキョクグマはいない。でも観光客はみんな喜んで写真を撮っている。

州都の玄関口での相変わらずのオトボケだけど、今回の旅にはあまり関係ないので、この話題は軽くスルーしておきたい。

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一方で、そう簡単にスルーできないのがこの寒さだ。2月のイエローナイフの最低気温はマイナス30度ほど。最高気温ですらマイナス10度ほどにしかならない。

しかも、僕が滞在した時は特に寒気が厳しく、昼間でもマイナス40度近い日が続いていた。

屋外に出ると、すぐに鼻の中が凍りつく。あっという間に小さな「ピキピキッ」という音がして凍ってしまうので、鼻がずっとムズムズし続ける。時々鼻をつまんでクニクニしてやらないと、気になって仕方がない。

次にまつげが真っ白になり、帽子からはみ出した髪の毛の先も白く凍る。上下のまつげが凍ってだんだんくっついてくるから、知らないうちに視界が狭くなっているのに気づく。

車を駐車する時には、写真のように電気を流し続けておかないと車が動かなくなってしまう。車内にペットボトルを置き忘れたりすると、翌朝には完全に凍りついていて、酔っ払って床で寝込んでしまったダンナの頭をこづくにはちょうどいい感じの“凶器”に変身していたりする。

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ここまで寒いと人間っていう生きものは家にこもって動きも鈍くなりそうなものだけれど、ここで生きる人たちは冬になると俄然、活動的になる。その理由が、冬の間にだけ現れる「アイスロード」と呼ばれる道路なんだ。

正式には「ウインターロード」と呼ぶそうだけれど、ここでは便宜的に「アイスロード」としておきたい。

アイスロードが出現するのは湖の氷が厚くなる1月から3月までのたった3カ月間。とにかく、湖が厚い氷で覆われると、その氷の上を道路にして車を走らせてしまうという話なんだけど。

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そもそも氷の上の道路と言われても、日本人には理解しがたいと思う。そこでこんな写真を用意してみた。アイスロードって、つまりこういうことだ。カーナビ上では、車は湖の底を走っているいう位置付けなんだろうか。

カナダのみなさんには大変申し訳ないけれど、僕はカナダ人ってなんとなく大雑把な人たち、という印象を持っていた。

だから最初にアイスロードの存在を知った時、住民が勝手に湖面に車を乗り入れ、みんなが走るもんだから、だんだん表面の雪が除かれて道路みたいになっているだけかと思っていた。失礼しました。

実はアイスロードはノースウエスト準州の政府が設置した「公道」なんだそうで、日本でいうところの道路交通法みたいなものも当然、適用される。

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そこで準州政府の運輸省を訪ね、いろいろと教えていただくことにした。対応していただいたのは、マイケル・コンウェイさんという責任者の方。

彼の説明によると、準州内には、このアイスロードがなければ燃料などの物資を運搬することができない先住民の集落があるんだそうだ。

もちろん、集落には滑走路があって飛行機が飛んでいるから、天候さえ悪くなければ食料品や日用品程度を運ぶことはできる。しかし、燃料や大きなものを空路で運ぶのは難しいし、そもそもコストもかさんでしまう。

だから準州政府が、こうした先住民の人たちのために冬の間だけのアイスロードを建設する。それによって彼らは冬になると車でイエローナイフにやってきて、1年分の燃料や物資を買いだめしたり、家具や家電製品のような大きなものを購入したり、あるいはレストランで食事したりもできるようになるんだそうだ。

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さて、アイスロードでやはり気になるのは、なんと言っても氷の道路の安全性。単刀直入に危なくないのか、と聞くと、すかさず「NO!」という答えが返ってきた。

氷はとても厚いし、割れ目があってもそれは表面だけのことであって、下の方まで奥深く割れることはない。

それでも運輸省ではアイスロードの安全性に細心の注意を払っていて、氷の厚さを常に測定し、割れ目の修復のためにあえて氷に穴をあけて水を汲み上げて凍らすことで氷を補強したり、危険があれば通行できる車両の重さや速度を制限したりするんだそうだ。

重量オーバーやスピード違反は氷に大きなダメージを与えるので厳しく罰せられる。

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ただし、イエローナイフにやってくる前、僕がネットでいろいろ調べていると、その中には湖に半分沈んでそのまま凍ってしまった大型トラックの写真もあった。

「それはまだ走ってはいけない時期にアイスロードに入り込んだ重量オーバーのトラックだ」とのこと。

確かにアイスロードの入口には、通行できる車種と重量が看板で示されている。

この写真の右の看板のアイスロードでは、10トンを超えるトラックは通行できないことになっている。それを無視してアイスロードに進入すると、とんでもないことになるってことだろう。

カナダの人が大雑把だなんて、大変失礼なことを言ってしまった。申し訳ない。ただし、ひと言だけ言わせてもらうと、ダメだと看板に書いてあるのにわざわざ突っ込んで氷の湖にズブズブッていうのも、ちょっと大雑把な感じがしないでもないけれどー。

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