01. ストリートカー・キャピタル

カナダ大都市の交通改革01. ストリートカー・キャピタル

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20世紀初頭、都市交通の花形といえばストリートカーだった。

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Horse-drawn streetcar [ca. 1892] Toronto Archives, Fonds 1244, Item 1356

ストリートカーの歴史は、19世紀中頃に活躍したオムニバスと呼ばれた馬車にまでさかのぼる。写真は1892年に撮影された馬車のストリートカーだ。人口が急増し都市化が進むと道路に鉄道が敷かれ、多くの乗客を効率的に運ぶRapid Transitという考え方が浸透していった。

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First electric railway in Canada, 1884, Dufferin St., Toronto. Toronto Archives, Fonds 16, Series 71, Item 3447

動力を馬から電気モーターに変えたカナダでの立役者は、発明家John Joseph Wrightという人物だ。彼は国内初となる発電所と電気供給システムを確立し、イートンズ(現在のイートンセンターの前身)をはじめとするダウンタウンのデパートや商店の夜間屋内照明を可能にした。

1882年に開催されたトロント産業博覧会(Toronto Industrial Exhibition。後のCNE=Canadian National Exhibition)では、会場を照らす夜間照明を設置して大成功を収め、2年後にはカナダ初の電気モーター式ストリートカーを同じ博覧会で走らせた、産みの親ということになる。

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Streetcar and safety island, St. Clair Avenue West at Bathurst Street, 1928 Fonds 1244, Item 1095

こうしてトロントで開発された電気モーター式ストリートカーは、1886年のウインザーを皮切りに、セントキャサリンズ(1887年)、トロント(1889年)、バンクーバー(1890年)、ウイニペグ(1891年)、ウイニペグ(1908年)、カルガリー(1909年)の各都市に広がっていった。 最盛期にはカナダ全国48都市に及ぶまでに発展したのだという。

写真は1928年の車両だが、屋根の上にパンタグラフをつけて電源を取るスタイルは、現在も変わらない。

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Double deck streetcar, Humber and Lakeshore, (copy), (Commercial Department)[ca. 1893] Toronto Archives, Fonds 16, Series 71, Item 5039

中にはダブルデッキ(2階建て)になっている車両もあったようだ。写真は1893年頃の様子を伝えているが、これだと確かにたくさんの人が乗車することができる。よく見ると、全員スーツに帽子という身なりで記念撮影のようだが、雨の日や雪が吹きすさぶ真冬はどうするのだろうと、いらぬ心配をしてしまう。

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この頃、北米でも急速にストリートカーが普及していた。1897年にアメリカ合衆国で最初の地下鉄がボストンで開通した時に使われたのは、実に電気モーター式ストリートカーだった。写真は2012年に訪れた時のグリーン線、Government Center駅だが、この路線は最も古いものだ。乗った車両は1987年に日本で製造された、近畿車輛製だった。

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トロントでは、毎年5月に「ドアズ・オープン」という歴史イベントが行われている。普段一般公開されない場所を週末の2日間限り公開し、市民を招くというプログラムだ。史跡やコンサートホール、研究施設や図書館など公開場所は様々だが、トロント市交通局(TTC)の車両整備場も公開されることがある。

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1921年製Peter Witts、1941年製PCC(Presidents’ Conference Committee)、現役のCLRV(Canadian Light Rail Vehicle)とALRV(Articulated Light Rail Vehicle)と歴代のストリートカーが集められていたが、この日の目玉は、Flexityと呼ばれる新型車両だった。運転席に座ることができること。行列ができるほどの人気だったが待つだけの甲斐はあり、座ってみるとなかなか良い眺めだった。

モータリゼーションのあおりを受け、北米では1940年代以降ストリートカー路線の多くはバスへと転換されてしまった。そして1950年代になると、本格的な地下鉄の時代がやってくる。それでもトロントの道路からストリートカーが無くなることはなかったのだ。歴史を振り返ってみると、トロントは未だに19世紀の沸き返るような都市交通を伝える、カナダのストリートカー・キャピタルと言って良いだろう。

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