14. カヌー好きの聖地

永遠のカヌー14. カヌー好きの聖地

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僕は今、このカヌーの原稿を書き進んでいくことに、かすかな不安を感じている。

ここから先、僕が皆さんにお伝えしようとしているのは、白樺の樹皮から作られた「バーチ・バーク・カヌー(Birch-Bark Canoe)」の作り方、という地味な話題だからだ。

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この写真は、昔通りの工法で作られたバーチ・バーク・カヌーだ。釘1本使わずに作られた船体内部の美しさを理解してもらえるだろうか。

白樺の樹皮を主な材料とし、その幹や別の木の根っこをひも状にしたものだけで一艇のカヌーが作り上げられるのだ。

僕は、先住民の人たちが生み出したこのバーチ・バーク・カヌーは、カナダ史における最高傑作だと確信している。

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けれど一方で、僕に共感してくれる読者が極めて少ないであろうことも十分に承知している。いったい何人の読者が僕についてきてくれるのか、今はまったく予想がつかない。振り向くと誰もいないような気がしないでもない。

それでも書いていこうと思う。なぜそこまで、と言われるかもしれないけれど、理由はただ1つ。僕が「変態」と言えるほどバーチ・バーク・カヌーが好きだからだ。

僕は以前、氷点下のイエローナイフでの取材の際、偶然にも市内の書店でこの「The CANOE」なる本を見つけ、興奮しながら購入した経験がある。

全編270ページにおよぶ分厚くて重たい本。最初から最後まで、「バーチ・バーク」をはじめ様々なカヌーの作り方や歴史が延々と書かれている、極めて「変態」的な本だ。

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そして今回、僕はオンタリオ州のピーターボロー(Peterborough)にある世界で唯一の「カヌー博物館」を取材する機会を得た。カヌー好きにとってはまさに「聖地」だ。

日本を出発する前、ついにこの日が来るのか、などと思いながら、改めて「The CANOE」を手にとってペラペラと眺めてみた。

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こんな「The CANOE」のような本もあるし、カヌーの博物館もあるし、僕のような極度のカヌー好きがカナダにもたくさんいるんだろうなあ、などと思いながら、ふと裏表紙を目をやった。

29・95ドルという結構な値段が記されたシールの横を見て、僕は驚いた。この本はカヌー博物館とのコラボで作られた、などと書かれている。購入して依頼、何度もこの本を見ていたけれど、ちっとも気付かなかった。

名著「The CANOE」はカヌー博物館とのコラボだったのか。カナダとはいえ、「変態」の生息数はそれほど多くないのかもしれない。

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しかしまあ、同好の士がどのぐらい数、存在するのかはとりあえず置いておこうと思う。問題は僕が楽しいのかどうか、だ。

ピーターボローのカヌー博物館に足を踏み入れると、ファンにはたまらない展示が次々と現れてきた。

まずはこれ。先住民の人たちのカヌーは、部族によって舳先の形状が違っていたことが分かる。

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例えばこの写真に写っている先の尖ったカヌーは、今のブリティッシュコロンビア州、太平洋側で暮らしていた部族のカヌーだ。

ビーバーの毛皮交易に使われた大型のカヌーの舳先はそり返ったようになっていて、岸辺でひっくり返すとテントのように下に潜り込めるようになっていた。

しかしこうして見ると、先住民が使っていたカヌーは必ずしも極端に舳先はそり返ってはいなかったようだ。というより、むしろそれは少数派だったようにも思える。

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そしてこの地図は、北米大陸における白樺の分布を示している。カナダの地では、カヌーが大活躍していた河川や湖を取り囲むようにして白樺が生い茂っていることが分かる。

つまり、行く先々にカヌーを補修するための材料が必ずある、ということだ。これは本当にすごいことであって、まるでカナダへの神様からのプレゼントのように思えてくる。

と、僕だけが興奮しているような気がしてならない。しかも僕が言うところの「カヌー好き」は、カヌーに乗ることではなく、バーチ・バーク・カヌーのことを見たり考えたりしているのがひたすら楽しい、という意味での「カヌー好き」だ。

それでも言っておきたい。可能な範囲で結構だ、めくるめくバーチ・バーク・カヌーの世界へと、足を踏み入れてはいただけないだろうか。

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