03. ARRET!

カナダ鉄道の歴史を探る旅03. ARRET!

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トロントはロンドンとニューヨークの特徴を併せ持つ北米の街。一方モントリオールの雰囲気はぐっとヨーロッパに近づく。歩いた道が石畳だったからだろうか。交通標識の一時停止も「STOP」ではなく「ARRET」とフランス語だ。通りすがりのパティオでは、ワイシャツを腕まくりした男性たちがビールを片手に、 お天気の良い午後のひとときを過ごしている。

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しばらくすると、三角形の塔が視界に入ってくる。「ポワンタ・カリエール考古学歴史博物館」だ。受付で入場券を買い簡単な説明を受けた後、上の階から順番に見たが、印象的だったのが地下の常設展示。まるで中世の地下室にでも入っていくような気分だった。

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ここには人類がいかにして東部カナダに住み着いたのかというファーストネーションズの暮らしから解き明かす、詳細かつインフォーマティブな展示が、パネルやジオラマを中心に大きなスケールで展開されている。歴史の知識があれば興味深いものばかりだが、そうでなくても展示を順に追っていくとわかるようになっている。

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圧巻は、石造りの壁面。器用な手つきで木材を加工し組み上げて行く日本建築とはまったく違う迫力を肌で感じることしきりだった。ここに立っていると、トロントはヨーロッパというより北米独自の文化を作り出しているということが肌で感じられる。カナダのヨーロッパ的な伝統とは何だろうか。そんなことを考えながら、ひんやりとした展示室を歩いた。

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この場所自体が、ユニークだ。1643年に行われたフランス人入植地の隣に作られた墓地の跡の発掘調査が終わった1992年、モントリオール誕生350周年記念行事の一環として、長く保存するため全体を考古学博物館にしたという。博物館の外壁には、ここがモントリオール発祥の地であることを示すプレートが埋め込まれているが、確かに400年近い歴史の重みが、建物全体から伝わってくる。

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モントリオールのあるケベック州では、「Je me souviens」というクルマのナンバープレートの言葉が有名だ。カナダのどの州にも何らかの言葉が書かれているが、このフランス語は「私は忘れない」というケベック州のモットー(標語)。彼らは何を記憶し、「私は忘れない」と言うのだろうか。そんな疑問に展示パネルの一つ一つが答えてくれるようだった。

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カナダの中でもケベック州はプレート理論で説明される古い大陸が元となっている。Canadian Shield(カナダ盾状地)と呼ばれるカナダ北東を覆う地盤は、45億年も前に由来するというのだ。ウイスコンシン氷河期には、ここに2千メートルを超える厚みの氷が大地を押し付けていため、 非常に固い岩盤で覆われているという地質学的特徴がある。石造りの壁面には、こうした土地の記憶が確かに残っている。

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氷河の氷解と地殻変動によって生まれたセントローレンス川のおかげで、ベーリング海を渡り西からやってきたファーストネーションズの人々の住みかとなった。大航海時代に沸くヨーロッパの余波を受け、フランス人がセントローレンス湾から川上へと探検を行い彼らに出会ったのは、歴史の必然だったのだろう。

街の詳細な歴史や、展示の図録を何冊か買い求める。次に訪れる前までには、読破したい。そう思いながら、カナダの鉄道発祥の地を目指して、今度はクルマのハンドルを握った。

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