12. キャンプの朝

永遠のカヌー12. キャンプの朝

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トム・トムソン・レイクのほとりでの朝を迎えた。テントから抜け出して、目の前の湖面に目をやる。

以前、紅葉のケベックを訪れた時にも同じように感じたけれど、早朝の湖というのは、どうしてこんなに穏やかで、波一つないんだろう。

その真っ平らな湖面をカヌーがまるで浮力を得たように、飛ぶように、すべるように、音もなく進んでいく。

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トム・トムソン・レイクは文字通り鏡のようで、カヌーが生み出す小さな水の動きなどあっという間に飲み込んでしまい、何事もなかったかのような静謐さを保ち続けている。

鏡に写りこんでいるのは、カヌーの船体と漕ぎ手の男女だけではない。

真ん中にちょこんと座っている愛犬までもが、しっかりと鏡の世界の住民となっている。

まだ朝霧が少しだけ湖の上を漂っている、その中に広がる不思議な上下対称の世界。

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本当の鏡だってここまできれいに世界を写し取ることはできないんじゃないだろうか。

太陽が昇って気温が上がっていくにつれて、少しずつ風が吹き始め、湖面に波が立ってきているようだ。

湖面に映り込むカヌーと人の姿も、だんだんユラユラと揺らめく感じになってきた。

僕の前を、早朝から動き出したキャンパーたちが次々とカヌーで通り過ぎていく。こんなに早くここを切り上げて、一体どこへ行くんだろう。

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ビーバーの毛皮を満載した巨大なバーチ・バーク・カヌーなら、まさに急ぐ旅だ。漕ぎ手たちはたたき起こされて、食事もそこそこに出発していったに違いない。

ああ、ルーン(Loon)が泳いでいる。

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ルーンはオンタリオ州の州鳥であり、カナダの国鳥でもあって、10ドル硬貨のデザインにも採用されている。

ルーンは潜水して小魚を食べる鳥だ。水がきれいなところで繁殖するので、環境を測るバロメーターとも言われているそうだ。

太陽の暖かさは人にも波にもルーンにも、一日の活動開始を促すのだろうか。

ただし、僕はと言えば、同じ太陽に照らされていても、のんびりしたもので、ようやく湖の水で手や顔を洗い、ゆるゆると身支度をしているところだ。

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髪の毛なんてきっとボサボサなんだろうけれど、自分ではよく分からない。

手を塗らして髪をなでつけた後は、帽子をかぶって、それでおしまいだ。

さあ、腹ごしらえといこうか。と言っても、僕はガイドさんが作ってくれる朝食を食べるだけではあるけれど。

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朝食のおかずはベーコンや玉ねぎを炒めて、たっぷりの卵でとじたようなオムレツで、結構なボリュームだ。

満腹になって、いよいよキャンプ2日目に突入する。きょうのメインイベントは、なんといっても「ポーテージ」だ。

水が途切れたところでカヌーを担ぎ上げ、次に水があるところまで人の力で荷物とカヌーを運ぶことをポーテージという。

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素人の勝手な想像だけれど、このポーテージこそがカナダのカヌーの代名詞なのだと思う。

だって、カナダほど川や湖や湿地がない場所でのポーテージは、ダムや急流で行く手を遮られた時に、カヌーを続けるためいったん陸地を移動することでしかないだろう。

しかしカナダでは、ポーテージそのものがカヌーの楽しみ方の1つなのだ。

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この写真は、僕がアルゴンキン州立公園で購入したピンバッチ。アルゴンキンではとにかく、このマークをやたらと目にするはずだ。

このマークがすべてを物語っている。カナダでのカヌーは、漕ぐものであると同時に、かつぐものなんだ。

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