Day5 ケープドーセット

C.W.ニコル、北極圏 への航海。Day5 ケープドーセット

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機動力のある小型ボート(ゾディアック)を駆使して難しい上陸地にも安全にゲストを送迎する。

岩だらけのディッジス島では、夏の北極圏の硬質だがしなやかな自然を歩いた。その翌日、我々は今旅の目玉、 イヌイット芸術の中心地へと足を踏み入れた。

イヌイット芸術の存在を、この旅に参加するまで私は知らなかった。それも、あれほど魅力的なものだとは。

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イヌイットの必須食糧であるアザラシの解体作業。ニコル氏は久しぶりの新鮮な生の肝臓に舌鼓を打った。

クルーズ5日目、「オーシャンエンデバー」はディッジス島からハドソン海峡を横切って巨大なバフィン島南西部の半島の奥に開けた村、ケープドーセットに向かった。

先住民イヌイットの言葉では、ここはキンガイットと呼ばれる土地だ。キンガイットは“高い山”を意味する。この土地を囲む優美な山と丘の連なりに敬意を込めて名付けられたのだろうという。

古代北極文明の遺跡がここで発掘されている。そのために、ドーセット文化という呼び名ができた。ここに暮らす人々は、その古代文明の流れをどこかにとどめているのだろうか。

キンガイット(ケープドーセット)は、優れたアーティストを何人も生み、現代イヌイット芸術発祥の地として、すでにずいぶんと前から世界に知られる存在だった。

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キンガイットの海岸に残る氷上で、カメラに向かってパフォーマンスを見せてくれたトゥクトゥという名の少年。

しかしイヌイットアートは、大昔から世の中に認知されていたものではない。1940年代の終わりに、ジェイムズ・ヒューストンというカナダ・トロント生まれの若い芸術家が、イヌイットの居住地に医師を送り届けるパイロットの助手となり、一緒に北極圏へ飛び立った。それが、全ての始まりとなった。ジェイムズはそこで、イヌイットの人々が彫る動物たちを題材にした石の彫刻と出会い、そこに高い芸術性を見いだした。

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大きなフードを持つ伝統的な女性用のパーカー“アマウティック”を着る若いお母さん。フードに赤ん坊を入れたまま器用に世話をする。

彼はその後、奥さんとともに北極圏を再訪、十数年間イヌイットの人々と一緒にケープドーセットに暮らして、彼らに芸術作品を生み出すためのさまざまな技法を教え、育てた。それが花開き、イヌイットアートは世界に羽ばたいたのだった。  

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「今、家を建てる現場で仕事を終えてきたところだよ」といい笑顔を見せるイヌイットの若者たち。

キンガイットで、我々は版画の工房を訪ねた。作者が直接出品する作品展なども渉猟して、気に入った作品があれば購入した。たぶん最大の収穫は、イヌイットの人々の独創性とユーモアと、動物たちへの愛情を、少し理解した気になれたことだろうか。

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