もっと知りたい ベニザケ

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【ベニザケ】 サケ目 サケ科

和名:ベニザケ
漢字表記:紅鮭
英名:Sockeye Salmon
学名:Oncorhynchus nerka

体長:平均60cmほど。最大84cm  体重:1~4kg。最大7kg
寿命:4~5年。最長8年(野生)
分布:北米ではカリフォルニア北部からアラスカ北部まで分布。
アジアではベーリング海、カムチャッカ半島、オホーツク海、千島列島、北海道の太平洋岸、三陸沿岸。

川・湖・海を旅する

ベニザケは、一生の間に、川・湖・海に旅をし、すみかを変える。

  1. 稚魚は、湖に注ぎこむ川の上流で誕生。
  2. 川から湖に下り、湖で1~2年過ごす。
  3. 湖から流れ出す川を下って、海に出る。海で2~3年かけて成長。
  4. 生まれ故郷の川に戻り、子孫を残す。

繁殖は生涯で一回だけ。繁殖を終えるとほどなく死ぬ。

海は、川や湖に比べて、食べ物となる動物プランクトンが多い。海に下ったベニザケは大きく育ち、生まれ故郷の川に帰ってくるのだ。

ただし、海に下らないで、湖や川にとどまったまま一生を過ごすものもある。そうしたベニザケは、体が小さく、成長しても35cmほどにしかならないし、卵の数も少ない。
湖から流れ出す川がない場合(川がせき止められて出来た湖など)では、海に下ろうにも下れない。言わば、陸に封じ込められた環境で育つわけで、「陸封型」と呼ばれる。
日本では、湖に留まったベニザケを「ヒメマス」と呼び、カナダでは「コカニー(kokanee)」と呼ぶ。

生涯一度の赤い装い

繁殖期のオス。

繁殖期のオス。背が張り出し、口先も大きく伸びる

繁殖期のメス。

繁殖期のメス。やはり体が真っ赤に染まる

ベニザケ(紅鮭)は、文字通り「紅色のサケ」。

英語では、”Red Salmon(紅鮭)”とも呼ぶが、”Sockeye Salmon”の方が一般的だ。Sockeyeという言葉、赤とも紅とも関係なさそうだが、実は大有り。Sockeyeの発音は、「ソーカイ」もしくは「サッカイ」に近い。フレーザー川下流域の先住民、「海岸サリッシュ」と総称される人たちの言語の一つ、ハーカメレム語で「赤魚」を意味する「サッケイ(Suk-kegh)」が、英語風に訛って、”Sockeye”となったのだ。

ところで、ベニザケはいつも赤いわけではない。成長につれて色が変わるのだ。

①孵化直後の「仔魚(alvin)」は、色素がなく、無色。お腹に卵黄を抱え、その栄養によって、数週間、水底で暮らす。
②水底を離れ、泳げるようになった「稚魚 (fry)」は、淡い鶯色の体に、黒い斑点が薄っすらとついている。
③数ヶ月で、体色が濃くなり、指でつけたような楕円形の斑点がはっきりとする。この段階の子どもを「パー(parr)」と呼び、斑点を「パーマーク(幼魚紋)」と呼ぶ。
④1~2年を湖で過ごすうちに、パーマークが消え、体の色は銀白色に。背びれの先端と尾びれの後端が黒くなり、体型も幾分ほっそりして、海に下る準備が整う。こうした変身を「スモルト(smolt)」と呼ぶ。変身後の魚も「スモルト」と呼ばれる。
⑤スモルトは、海に下って成長。2~3年かけて成魚(adult)になる。成魚は、背に近い部分は黒っぽく、下半分は銀白色をしている。

海で育ったベニザケ

海で育ったベニザケ

⑥繁殖期を迎え、繁殖のために川を遡り始めると、オスもメスも赤みを帯びる。やがて体は真っ赤に、頭部は緑色に色づく。
色だけでなく、形も変わる。オスは背中が盛り上がり、鼻面も長くなる。メスは、鼻面が多少伸びるが、背中の形は変わらない。フレーザー川などでは2~3週間かけて川を遡り、産卵・授精。その後ほどなく死ぬ。
つまり、ベニザケが赤いのは、生涯最後の2~3週間に限られるのである。

生まれ故郷めざして

ジャンプ寸前のオス

ジャンプ寸前のオス

ジャンプするメス

ジャンプするメス

産卵のために苦労をして川を遡らなくても、海で産卵すればよさそうなものだが、海は食べ物が豊かな反面、サケの卵や稚魚を食べる敵も多い。川の方が安全なのだ。
しかし、川で産卵するにしても、サケが産卵する場所は、水質や水温、川底の状態など、条件が厳しく限られる。見知らぬ川よりも、生まれた川の方が、そうした条件が間違いなく揃っている。自分の子孫を確実に残すため、サケは生まれた故郷の川に戻り、産卵するという道を選んだのである。

ところで、サケは自分が生まれた川の水の匂いを記憶し、それをたよりに、故郷まで正確に遡上すると考えられてきた。しかし、最近ではもっと他の方法も使っているのではないかと考えられるようになっている。
ベニザケは、遡上の途中でときどき水面上にジャンプする。この行動は、ルートを探っているのではないかと考えられている。水面から出て、目で景色を見たり、頭にある特殊な器官で太陽や星を察知したりして、自分の位置を確認。進んでいる方向が誤っていないかどうか確かめていると言うのだ。
ベニザケは様々な感覚を頼りにふるさとを目指す。

4年に一度のビッグラン

ビッグラン

カナダ太平洋沿岸には、ベニザケのほか、数種類のサケの仲間が見られる。主な種類は、シロザケ(Chum salmon)、マスノスケ(キングサーモン)(Chinook salmon)、カラフトマス(Pink salmon)、ギンザケ(Coho salmon) だ。
どれも、川の上流で産卵し、海に下って成長するのは同じだが、生まれた川に帰る性質(母川回帰性)が最も強いのが、ベニザケだといわれている。

フレーザー川のベニザケ遡上数グラフ

フレーザー川のベニザケ遡上数。単位は100万匹。大遡上の年(赤)には例年の何倍も遡上することもある。

フレーザー川では、100年以上にわたる調査の結果、ほぼ4年に一度、特に多くのベニザケが遡上することがわかっている。これを「ビッグラン(big run /dominant run)」と呼ぶ。2014年はその「当たり年(dominant year)」。次の当たり年は2018年。当たり年の翌年も、まずまずの遡上(sub-dominant run)が見られる。
なぜ4年に一度、大遡上が起こるのかは、よくわかっていない。
ビッグランの様子は、「もっと知りたい フレーザー川」で紹介する。

実は白身の魚!?

ベニザケの肉

ベニザケの肉は、サケの中で最も赤い。ところで、ベニザケの切り身をよく見ると、肉は確かに赤いが、皮は少しも赤くない。実は、真っ赤な切り身は、海で捕らえたベニザケ。産卵のために川を遡る前なので、皮は銀色なのだ。

産卵が近づくと、肉を赤く染めていた色素が皮に移り、肉は赤身がうす薄れ、白っぽくなっていく。メスの場合は、皮だけでなく、卵にも赤い色素が移る。だから、イクラは赤いのだ。イクラに赤い色素を使うので、メスの皮の赤さは、オスに比べてやや薄い。

これはベニザケに限らず、他のサケの仲間にも同様の現象が見られる。何も、わざわざ肉の赤みを皮に移さなくてもよさそうなものだが、サケにはサケの事情がある。体色が赤いことは、「婚姻色」といって、結婚できる状態であることを示している。体が赤みを帯びないと、異性にモテず、子孫を残すことができないのだ。

ところで、カツオ、マグロ、ブリなど、赤身の魚の身が赤いのは、ヘモグロビンやミオグロビンという、赤い色素タンパク質の量が多いから。
一方、ベニザケなどサケの肉が赤みを帯びているのは、食べ物の甲殻類(エビやカニの仲間。ベニザケの場合、アミ類など、海に浮遊する微小な甲殻類が主な食べ物)に含まれる、アスタキサンチンという色素が、肉に移るからだ。
だから、サケは、学問上、白身魚に分類される。

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