10. ビッキーさんの料理教室・その1

メープルシロップ ワンダーランド10. ビッキーさんの料理教室・その1

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ケベック州のイースタンタウンシップスというエリアをご存じだろうか。右の地図の濃い茶色のところ、セントローレンス川の南にあって、アメリカと国境を接する街だ。

1776年のアメリカ独立宣言を受け、イギリスからの独立に反対する人々が次々とカナダにやってくるようになった。もう少し正確に言うと、いずれもイギリスの植民地だった「のちのアメリカ」から、「のちのカナダ」に移り住んだ、ということになる。

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イギリス国王に忠誠を誓った人たちが含まれていたことから、彼らは「ロイヤリスト(王党派)」と呼ばれ、イギリス政府からカナダ国内の土地が分け与えられたりしたという。

イースタンタウンシップスの開拓の歴史は、ここから始まるんだそうだ。この土地の住民はロイヤリストにとどまらず、フランス系カナダ人や、のちに入植してきたスコットランド人らも加わり、農業や酪農が盛んな土地として発展を遂げる。

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今、イースタンタウンシップスは、メープルシロップを生み出す砂糖カエデの森や、リンゴ畑などが広がり、豊かな自然と食を楽しむことが出来る人気エリアとして知られるようになっている。

以前、「しあわせキュイジーヌの旅」という原稿で紹介した、アップルパイが人気のリンゴ農家「レ・ヴェルジェール・ドゥ・ラ・コリン」も、ここイースタンタウンシップスにある。シードルも本当においしかった。

そうそう、このリンゴ農家で教えてもらった話だけれど、パソコンの名前として有名な「マッキントッシュ」は、実はカナダ生まれのリンゴの名前だ。

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ケベックの隣、オンタリオ州に住むマッキントッシュ氏が発見した森の自生リンゴが「マッキントッシュ・レッド」と名付けられた。マッキントッシュ氏について調べてみると、この人もアメリカから逃れてきたロイヤリストだったようだ。

苗字に「Mac」とか「Mc」がついている人はスコットランドの出身だ。「~の息子」という意味で、例えば「マクドナルド」はドナルド家、ドナルド一族の出身、ということになるんだそうだ。マッキンレーとか、マクレガーとか―。

とすると、映画「ダイ・ハード」のジョン・マクレーン刑事(ブルース・ウィルス)も、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主人公、マーティー・マクフライ(マイケル・J・フォックス)も、あるいは敗戦時に厚木に降り立ったあのダグラス・マッカーサー元帥も、みんなスコットランド移民の家系ということになるんだろうか。

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さて、マッキントッシュ氏の新種発見の話にはさらに続きがあって、リンゴのマッキントッシュは明治期に日本に持ち込まれると「旭(あさひ)」という名前に変わり、今でも北海道や青森県で生産されているらしい。

スコットランド人である自分の苗字が、数百年のちに世界中で知られるパソコンの名前となり、一方で、はるか遠く日本では「旭」になってしまったりと、もうマッキントッシュ氏が知ったらびっくりして腰を抜かすんじゃないだろうか。

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話がかなり脱線してしまったけれど、僕が今回、自然豊かなイースタンタウンシップスを訪ねたのは、本場のメープル料理、それも家庭料理に触れながら、自分でも料理を体験したいと考えたからだ。

そんな僕にメープル料理を教えてくれるのは、笑顔が素敵なビッキーさん。これでお孫さんがいるというのだから驚きだ。ビッキーさんはイースタンタウンシップスに暮らし、お宅では乳牛を飼い、砂糖カエデの木からメープルシロップも作っておられる。

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前にも書いたけれど、僕が常々思っているのは、メープルシロップを砂糖やみりんの代替品にしてはいけない、ということだ。日本でメープルを広めるために、わざわざ無理をしてメープルシロップを使っているような気がしてならない。

だから、日本でもっとメープルシロップを身近なものにするためには、メープルシロップならではの使い方、それもレストランで出てくるような料理ではなく、一般家庭でも手軽に作れる料理を知ってもらうのが早道なんだろうと思う。

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そして、男の僕でもできるとなれば、そのメープル料理のハードルはぐっと低くなるはずだ。

「人に料理を教えたことなんてないから」というビッキーさんお勧めの料理は、豚ヒレ肉のメープルシロップ焼き、とでも言えばいいんだろうか。

ヒレ肉をメープルシロップから作った“メープルリキュール”とマスタード、それにパセリの中に漬け込んでおく。漬け込む時間は1~2時間ぐらいで十分なんだそうだ。

さあ、僕は何をすればいいんでしょうか、と気負いこんでいたら、タマネギを刻む仕事を任された。まあ、初心者だから、この扱い、これはこれで仕方がないなあ。

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