09. 本当の大冒険

メープルシロップ ワンダーランド09. 本当の大冒険

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僕は以前、日本の食材を使ったメープルシロップ料理の可能性を探るため、東京は青梅市のご自宅に、ケベック生まれのマリーさんを訪ねたことがある。愛犬と温かい薪ストーブが迎えてくれる、カナダのテイストが感じられるお宅だった。

その時のことは「メープルシロップの大冒険」という原稿で紹介したけれど、マリーさんはベーコンを巻いた長芋にメープルをからめて焼いたり、メープルとタラコであまじょっぱいフライドポテト用の「たれ」を作ったりと、斬新なメープル料理を考案してくれた。

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今回はその続編だ。実はその時、マリーさんは僕に、恐ろしく簡単で、かつ衝撃的なメープル料理を教えてくれていた。このことはどうしても書き残しておく必要があると思う。

その料理に名前を付けるとすれば、「メープルシロップ・牛乳かけご飯」ということだろうか。それにしてもこんなの、本当に「アリ」なんだろうか。

マリーさんが僕の目の前にセットしたのは、メープルシロップと刻んだクルミ、それにデザートのグレープフルーツ。その佇まいからすると、これは間違いなく朝食だ。

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マリーさんは大学生の時にカナダから日本に留学してきた。故郷・ケベックでの朝食と言えばシリアルだったけれど、日本での下宿先で出される朝食はいつも白いご飯と味噌汁だったそうだ。

「カナダ人は日本人ほど朝からしっかり食べないんです。もっと軽く済ませるのが普通です」。けれど、その頃の日本で買うことができるシリアルと言えばコーンフレークぐらい。今のようにいろいろな種類のシリアルは売っていなかった。

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コーンフレーク以外のシリアルを食べたい、と考えたマリーさんが白羽の矢を立てたのが、朝食に出てくる白い「ご飯」だった。

「シリアルって穀物のこと。お米も穀物でしょう」とにっこり。そう言われれば、確かにそうだ。

「それに、冷たい牛乳もご飯にかければちょうど温まって、冬でも体が冷えないでしょ」とのこと。これもまあ、その通りではある。

マリーさんが白ごはんにメープルシロップをかけ、牛乳を注ぎかける。刻んだクルミをパラ、パラ。これで和洋折衷ならぬ、「日加折衷」のシリアルの完成だ。

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恐る恐るスプーンを口に運んだ僕の感想は、「あれ、意外にいけるなあ」―。甘くしたご飯って結構おいしいんだ、と考えているとマリーさん、「日本人は、ご飯にあんこをまぶした甘い『おはぎ』を食べるじゃない」。

マリーさんの指摘は、いちいちごもっともだ。確かに甘いご飯は既に存在していた。

メープルシロップとご飯の甘みがほどよくマッチしているし、クルミの食感がなんとも心地よい。爽やかな朝食、という感じがする。

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「それとね、もう1つ考えたの。日本人って卵かけご飯を食べるでしょ。だからこのメープルのご飯に卵の黄身だけを混ぜるの」。

マリーさんは常に、僕の想像を軽々と超えてくる。今度は「メープルシロップ・牛乳&卵かけご飯」というわけか。

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白いご飯の上に、卵の黄身と刻んだクルミ。メープルシロップと牛乳が注がれ、マリーさんが楽しそうにご飯をかき混ぜていく。

できあがった「メープルシロップ・牛乳&卵かけご飯」は、クルミを除けば普通の卵かけご飯にしか見えない。どうしてこれが美味しいんだろう。卵の黄身によって、さっきよりまろやかさが増している。

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そもそもマリーさんに新しい料理を考えてほしいとお願いしたのは、砂糖やみりんの代わりにメープルシロップを使う程度では、なんだかメープルシロップは砂糖の代替品みたいじゃないか、と思ったからだ。

でも、メープルシロップとご飯があうのだとしたら、日本にはほかにもたくさん、メープルシロップとマッチする食材があるはずだ。

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今度はマリーさん、メープルシロップをフライパンに注いで目玉焼きを作り始めた。メープルシロップにはこんな使い方もあるんだ。

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マリーさんの新作メープル料理が大皿に盛り付けられた。ベーコンで巻いた長芋はメープルシロップで焼き上げられた。新鮮ポテトのフライにはメープルシロップとタラコで作った「たれ」が添えられている。

メープルシロップの甘さをまとった目玉焼きは、イングリッシュマフィンの上にふわりと乗せられた。

「日本酒の生酒にメープルシロップと氷を入れたら、女性向けの新しいカクテルができると思うの」とマリーさん。これには僕も賛成だ。

「それからね、スーパーで売っている『もずく』って甘酸っぱい『たれ』でしょ。メープルシロップとお醤油、生姜で『たれ』を作ったら美味しいんじゃないかと思うんだけど」。

これにはすぐには賛成とは言えない。目をつぶって想像してみたけれど、どんな味になるのか、にわかには分からない。

でも実際にやってみたら、またしても予想を裏切られるような美味しさが待っているのかもしれない。

機会があったら試してみてほしい。誰でもがほんの少しの勇気で、「メープルシロップの大冒険」に出発することができるはずだ。

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