02. メニューが教えてくれること

カナディアン・ロッキーを越えて02. メニューが教えてくれること

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バンクーバーからカナディアンロッキーへと向かうロッキーマウンテニア号の旅は、途中のカムループスという駅でいったん列車を降りてホテルに泊まり、2日目に念願のロッキーに到達するという1泊2日の行程だ。

だからこの旅では、2日間にわたる朝食と昼食の計4回、1階の「レストラン」のお世話になる。

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初日の朝食に僕がチョイスしたのは、エッグベネディクト。メニューでは「サー・サンドフォード・フレミング・エッグベネディクト」という名前が付けられている。

右はそのメニューの一部を切り取ったもの。3つ目に書いてある「SIR SANDFORD…」というのが、それだ。

サンドフォード・フレミング卿というのは、大西洋と太平洋を結ぶ大陸横断鉄道建設の主任測量技師で、困難を極めたロッキー越えでも、そのルート選定に当たった人物だ。

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もっとも、最終的にそのルートはある事情で採用されなかったけれど。

サンドフォード・フレミング卿は、人々が鉄道で高速移動するようになってから問題化した「時差」の解決策として「世界標準時」を考案したり、カナダ最初の切手「3ペニーのビーバー」をデザインしたりと、大変多才な人物のようだ。

そうそう、フレミング卿もスコットランドからの移民だった。バンクーバーを出発する時の見送りがバグパイプだったことをふと思い出した。

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そんな偉人の名を冠したエッグベネディクトは、半分にした小ぶりのジャガイモの上にイングリッシュマフィン、そしてベーコンではなく、モントリオール名物のスモークミートを重ね、一番上にトロトロのポーチドエッグが2個、鎮座している。なんともカナダらしく、また贅沢な朝食だ。

そうそう、エッグベネディクトなどのメインの前には、こんなフルーツが出てきた。黄色というか、だいだい色の丸いのは食用の「ほおづき」だ。

日本ではあまりお目にかかる機会はないけれど、カナダでは食用ほおづきは結構一般的で、生で食べる以外にケーキやタルトに使ったり、ジャムにしたりもする。

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エッグベネディクト以外のメニューとしては、例えばこの「GOLD RUSH SCRAMBLE(ゴールドラッシュ・スクランブル)」がある。

ゴールドラッシュの名の通り、金色にも見える、何ともきれいな黄色のスクランブルエッグの上に、カナダを代表する食、スモークサーモンが乗せられ、横にはキャビアまで添えられているという、これまた贅沢なひと品だ。

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ロッキーマウンテニア号がたどるこの線路が出来上がるおよそ10年前、1858年に「英国領ブリティッシュ・コロンビア植民地」では金鉱が発見され、ゴールドラッシュが始まった。

しかしその後、金の産出量がピークを過ぎると、あっという間に地域経済は立ち行かなくなってしまう。

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誕生したばかりのカナダ政府は1870年、大陸横断国家を目指してブリティッシュ・コロンビア植民地と交渉し、100万ドルにのぼる債務引き受けと、大陸横断鉄道の2年以内の着工、そして10年以内の完成を約束した。

太平洋に面したブリティッシュ・コロンビア植民地が大陸横断国家の建設に参加する、その条件がロッキーを越えて大陸を横断する鉄道だった、というわけだ。

ブリティッシュ・コロンビア州(BC州)がカナダに参加したのは、カナダ政府との約束が成立した翌年、1871年のことだ。そして1887年、ついにカナダ太平洋鉄道(CPR)の蒸気機関車「374号」がバンクーバーへとやってくる。

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「10年以内」の約束からはずいぶんと遅れたけれど、カナディアンロッキーを越えて東と西を鉄路で結ぶのは、それだけ大変な事業だった、ということだろう。

ちなみに、このさわやかな朝食メニューの写真は、僕からのオマケ。BC州らしく、「PACIFIC NORTHWEST PARFAIT(パシフィック・ノースウエスト・パフェ)」という名前が付けられている。アーモンドのグラノーラと新鮮なイチゴをバニラヨーグルトといっしょにいただく。

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そう言えばロッキーマウンテニア号では、BC州やアルバータ州などカナダ西部の食材を楽しんでもらうため、地元の農家から新鮮な食材を仕入れるようにしている。

だからこのパフェのグラノーラももちろん市販の製品ではなく、ホームメイドだそうだ。

朝食の最中も、ロッキーマウンテニア号は相変わらずロッキーを目指してカタタン、カタタンと、軽やかな音を響かせ続けている。

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©Rocky Mountaineer

この列車では、トロトロのエッグベネディクト、それにスモークサーモンとキャビアを従えた贅沢なスクランブルエッグが、僕に大陸横断鉄道にまつわる物語を静かに語り続けてくれる。

アメリカには申し訳ないが、ブリティッシュ・コロンビア州がカナダであってよかったと思う。1つ1つの料理にぜひ目を向けてほしい。口に運ぶたびに、今の姿の「カナダ」でよかったと、改めて感じることができるはずだ。

コメント

  • 大北 尚代

    関口知宏のヨーロッパ列車旅に憧れ。
    2年前から1人列車旅に出かけていますが、
    カナダのリッチな列車旅も素敵ですね。
    次はチャレンジしてみたいです。

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