01. 波間に浮かぶゆりかご

僕とアンが見つけた14の物語01. 波間に浮かぶゆりかご

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「あたし、もう好きでたまらないわ。こんなところで暮らすんですもの、うれしいわ。プリンス・エドワード島は世界じゅうでいちばんきれいなところだって、いつも聞いていましたから」-(モンゴメリ著/村岡花子訳/新潮文庫刊「赤毛のアン」より)

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誰からも大切に思われなかったり、心配されていないとしたら、僕は本当にこの世界に「いる」と言えるんだろうか。

もしかしたらその女の子は、11歳になるまでどこにも「いなかった」のかもしれない。

でも、ここにやって来るまで他人(ひと)から見向きもされなかった1人の女の子を、この島が初めて温かく包み込んでくれたんだと思う。

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だから少女は島中に幸せをふりまき、その物語に魅せられたたくさんの人たちが、まるで彼女に代わって恩返しをするかのように、今もこの島を愛し続けている。

ただ、ちょっと待ってほしいんだ。

「赤毛のアン」という一色でプリンス・エドワード島を塗りつぶしてしまうのは、あまりにももったいない気がする。

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島の名前はみんな聞いたことがあるはず。誰もが子供の頃、どこかで読んだことがある、あの「赤毛のアン」の舞台になった島だ。

でも、僕が知っているこの島は、楽しい人がいっぱいいて、美味しいものがたくさんあって、見たこともないような美しい風景に溢れていて。

例えば、先住民の人たちがかつて、この島には30種類とか40種類とか、数え切れないほどの「緑色」がある、と言っていたのを知っているだろうか。

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おもちゃのような色使いの灯台が島のあちこちにあって、周囲を平らな芝生の緑が守っている。

僕の背丈よりずっと高いトモロコシはぴんと背筋を伸ばして、そのまっすぐな緑は晴れがましくさえ見える。

きらきらと太陽に輝く緑の葉の中で、赤い色を輝かせているのは小ぶりのリンゴ。たぶん、アンが食べていた、あの砂糖づけになるリンゴだろう。

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収穫間近のジャガイモは、本来の緑色を枯れがかった色に変化させながら「その時」を待ち、干し草ロールからは、太陽の光をいっぱいに浴びていた頃の緑が、香りとなって立ち昇っている。

ひとつとして同じものはない「緑色」との間で見事なコントラストを描いているのが、この島特有の真っ赤な大地だ。

緑と赤のコントラストに空の青が加わり、空よりも濃い青をたたえた海は、ふりそそぐ光を受けて静かに揺らめいている。

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この島の風景をじっと見つめていたら、まるで心が深呼吸しているかのように、体の中から何かが抜け出して、僕の中に何かがすうっと入ってきた。

美しい色たちに抱かれながら、カナダ東部の海に浮かぶ小さな島、プリンス・エドワード島=PRINCE EDWARD ISLAND(PEI)。

「波間に浮かぶゆりかご」

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先住民の人たちが、そんな美しい名前で呼んだPEIのすべてを感じる旅に出てみようと思う。

永遠に生き続ける「赤毛のアン」、アン・シャーリーと手を携えながら。

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