05. モントリオールの代名詞

君はまだ本当のカナダを知らない05. モントリオールの代名詞

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カナダの国家的B級グルメ、プティンが観光ガイドで取り上げられることはまずないけれど、モントリオールの「シュワルツ」は、必ずガイドブックに登場するB級グルメの定番中の定番だ。

僕はこの店のスモークミートを、モントリオールの代名詞だと思っている。

カナダという国そのものが移民によって成り立っていて、もちろんモントリオールも移民の街だ。そして、ここにスモークミートを持ち込んだのはユダヤの人たち。モントリオールの街中では黒い帽子に長い髭の人たちを普通に目にしたりする。

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「シュワルツ」も1928年、ルーマニアからやってきた「シュワルツさん」によって始められたそうで、それが今や様々な国からやってきたすべての移民に愛されているのだから、僕がモントリオールの代名詞と呼ぶのも分かってもらえると思う。

さて、じゃあスモークミートとは何か、という話なんだけど、文字通りスモークした肉であることは間違いない。

というと、少しパサパサした感じの肉なんじゃないかと思うかもしれないけれど、これが意外なほどにジューシなんだ。

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パサパサした燻製肉をパンではさんだらモソモソと喉に引っかかりそうだけれど、シュワルツのスモークミート・サンドイッチはジューシーのひとこと。

かぶりつくと口の中で肉汁がジュワーッと広がって、パンとのバランスが実に絶妙。飲み物なしでも食べ進められるぐらいのジューシーさなんだ。

牛肉はスパイスに10日間じっくり漬け込む。これをオーブンで8時間焼き、次に3~4時間かけて燻製にする。出来上がった肉の固まりがこの写真だ。

カメラを構えた僕へのサービスで肉を持ち上げてくれたんだけど、狭い店内からお客さんたちの「おお~っ」という大きなどよめきが起き、一斉にカメラが向けられた。

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ちなみに10日間漬け込むスパイスがシュワルツのスモークミートの味の決め手なんだそうだが、それは「シークレット・スパイス」だとのこと。絶対に教えられない企業秘密のようだ。

で、この写真の男性がこの店の名物、ジョニーさん。かくいう彼も10歳の時にカナダにやってきたポルトガルからの移民だ。14歳でこの店に入り、もう40年以上、スモークミートを切り続けている。

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包丁を持つ右腕の肘にはいつもサポーターを付けている。なにせ40年だ、ジョニーさんに言われて彼の腕に目をやると、確かに右腕と左腕の太さが明らかに違う。右腕の方が一回りがっしりしている。

ジョニーさんはいつも陽気で、日本人を見ると「サムライみたいだろ」と笑いながら大きな肉をシャシャッと切って見せてくれる。

薄くすばやく肉を切り、パンの上へ。もう一方のパンにマスタードを塗ってかぶせ、真ん中から真っ二つ。次から次へと皿に乗ったスモークミート・サンドイッチがカウンターの上に並べられていく。

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スモークミート・サンドのサイドメニューとしてはコールスローやピクルスがある。ただし、サンドイッチと同様、とんでもない大きさと量なので、オーダーの際はあらかじめ覚悟しておいてほしい。

それから、スモークミート・サンドイッチにあわせる飲み物は、なぜかこの写真のブラックチェリーのコーラなんだそうだ。店側の説明によると、「抑え目の甘さがスパイシーなスモークミートにぴったり」なんだそうだ。

「スモークミートの味は創業以来、ずっと変わっていないの?」と聞いてみた。

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「スパイスなどの味付けは変わっていないけど、健康志向が強まったので、一度、スモークミートの肉の脂身を少なくしたんだ」とジョニーさん。

「昔のを食べてみるかい?」と脂身たっぷりのスモークミートの切れはしを僕のサンドイッチに追加してくれた。

赤身と脂身のミックス・スモークミートになった。どれどれ、とかぶりついてみる。あれ?こっちの方が数段うまい。スモークミートが口の中でジュワー、ジュワーと広がって、口のはしっこから肉の脂が流れ出てきそうだ。

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「ヘルシー志向」の名のもとに脂身が減らされるのは時代の流れかも知れないけれど、どうせガッツリ食べるんなら「ヘルシー」なんて言葉はほんのひと時忘れたいと思う。

カナダ人でも日本人でも、人間なんてどうせ業の深い生き物なんだから。

ただしだ、この取材は業が深すぎる、なにか大切なことを忘れっぱなしな気がしないでもない。このまま食べ続け、書き続けて大丈夫なんだろうかー。

続編ではいよいよ、「ティム・ホートンズ編」が登場。なぜこのドーナツチェーン店はカナダ全土に存在し、カナダ国民に愛され続けているのか―。僕だってその理由は全然分からない。だから「ティム・ホートンズ編」を読んでもらっても、たぶん分かるはずがない。謎が謎を呼ぶ「君はまだ本当のカナダを知らない(続編)」は今夏、公開予定。

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